私の若い頃は、共働きの人が殆どおらず、共働きをしていても、家事をしている夫は、さらにいなかったという話を、何度もしました。
では、私はなぜ、家事をする気になったのでしょう。
若い頃は、私も、「共働きするなら、女性が家事をすべき」派でした。
そもそも、会社に入った頃は、共働き自体、選択肢にありませんでした。
それが、「先輩を見ていると、結婚したら、独身時代のような余裕のある生活はできないんじゃないか」ということに気づきました。
独身貴族という言葉が、もてはやされ始めた頃です。
それでも、世の中では、結婚して一人前で、仕事にも責任が持てるようになるという考えが主流でした。
言うなれば、独身時代は、最後のモラトリアムだと考えられていて、いずれはそこから出なければならないものでした。
一方では、結婚して、自由になるお金や時間が減るくらいなら、結婚しないほうがましだという考えが、現れ始めていました。
実は私も、それに近い考え方をしていました。
一つには、さっぱり、女性にもてなかったというのがあります。
職場やプライベートで出会う機会も少なく、おまけに経験値が少ないので、アプローチがまずかったりして、チャンスがあってもさっぱり生かせませんでした。
加えて、当時の女性たちは、ぐいぐいと引っ張ってくれる男性を、好むことが多かったようです。
それは、専業主婦志望の女性たちだけでなく、共稼ぎ志望の女性たちも同じでした。
自分より稼ぎが多く、積極的で遊び上手な男性たちの方を向いていた人が、大半だった気がします。
そんな時代に、会社の仕事があまり好きではなくて、どうも頼りない感じの私は、結婚相手として考えられなかったのでしょう。
ところが、妻は、ちょっと考えが違いました。
若い頃は、やはり引っ張ってくれる男性が好みだったようですが、気が強い同士では、どうもうまくいかなかったようです。
共働きを続けていくためには、仕事の面で頼りなくても、家事をやってくれるような男性がいいと悟ったと、言っていました。
どうにも仕事に情熱が湧かなかった私の方も、フルタイムで働いてくれる妻が、願ったりでした。
妻との結婚生活を、維持するためには、何をすべきかと考えて出した結論が、家事の分担です。
もちろん、会社に勤めながらの家事は大変でした。
ですが、その負担を妻にすべて任せるのは、どう考えても間違っているとしか思えませんでした。
それに、家事の苦労は、妻が、「こんなに家事をしてくれて、すごく嬉しい。あなたと結婚してよかった」と喜んでくれることで、吹き飛んでしまいました。
相手に感謝を伝えるというのは、夫婦の間でもすごく大事だというのが、わかると思います。
おかげで、若い頃に私を選ばなかった女性たちに対して、見返してやれた気分にもなりました。
もちろん、その女性たちに連絡は取っていませんし、面と向かって言えるわけではありません。
ですが、妻が友人たちから、「あなたのところの旦那が羨ましい……」といった褒め言葉をもらったと聞くと、ガッツポーズをしたくなります。
自分のやってきたことが、間違いではなかったと、確信できる瞬間です。
(尚、実際の夫婦生活は、家事をしているからといって、万事うまくいくわけではなく、多少の美化はあります)