こういったブログを書いている関係で、老後の生活費に関する本には、どうしても目が止まる。
そこで、長寿大国日本と「下流老人」という本を読んで見た。
近年で、これほど時間を無駄にしたと思った本は、なかったというのが、読後の感想である。
何しろ、内容の大半は、「下流老人」とは関係がなく、検診やら介護やら、老後の医療に関する、さまざまな問題を列挙しているだけなのだ。
著者も、まえがきで書いているように、ベストセラーになった、「下流老人 一億総老後崩壊の衝撃」にあやかった題名をつけただけの、「柳の下の蛙」狙いである。
問題は、それだけではない。
医者が書いているにも拘わらず、高額療養費制度などに関する記述が、間違いだらけなのだ。
例えば、透析治療に月40万円かかり、高額療養費制度を使っても月数万円とある。
だが、実際には、透析自己負担額は、1か月1万円程度(一定以上の所得のある人でも2万円程度)となっている。
高額療養費制度は、透析に関しては特に手厚くなっているが、他の病気であっても、収入に応じた自己負担限度額があり、無収入に近い人は、負担が少なくなっている。
もちろん、病気によっては、かなりの負荷になることはあるだろうが、この本のように、病気になった途端に家計が破綻し、下流老人になるというようなものではない。
また、「60歳以上になれば、毎年の検診を受けないでもいい」などという記述も、呆れ返るばかりだ。
60歳代は、まだ現役で働いている人間が大半である。
どこか悪いところがあれば、しっかり治さないと、それこそ病気で働けなくなって、「下流老人」に転落してしまう。
私も60過ぎだが、若い頃に比べれば、体力は落ちているものの、海外旅行にも行っているし、まだまだ老けこむ年ではない。
著者は、執筆時(2016年)に、まだ45歳前後だったからわからないのかもしれないが、老人医療を語るには、あまりに経験不足なのではないかと思った。
このように、出てくる数字や記述があまりにいい加減なので、何かおかしいと思って奥付を見たところ、発売こそ幻冬舎であるが、発行は「幻冬舎メディアコンサルティング」となっていた。
即ち、自費出版なのである。
だから、幻冬舎編集部の手が全く入っておらず、内容の真偽も裏付けが取られていない。
同社のホームページにもあるように、出版することにより、会社の宣伝をするための本なのである。
和田秀樹氏のように、本を書いてお金を貰うのではなく、著者が、所属している病院の宣伝のために、自分でお金を出して書いた本なのであった。
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