2千万円問題は嘘であり、800万円もあれば充分だという記事が、「幻冬舎ゴールドオンライン」というweb雑誌に出ていた。
そもそも、2千万円問題というのは、総務省が、5年ごとに行なっている『全国消費実態調査(以下、実態調査)』に基づいて、金融庁が作成したレポートからきている。
2019年の実態調査を例に取れば、65~69歳の世帯の手取り収入の平均が、月に20.9万円(年間250.8万円)なのに対し、支出の平均が、26.4万円(年間316.8 万円)と、月に5.4万円、年間で66万円の赤字となる。
世の中の世帯は、預金を取り崩すことによって、この赤字を賄っているという。
そして、年間66万円の取り崩しが、30年間続くと仮定すると、家計の不足額は66万×30=1千980万円となる。
これにより、2千万円の貯金がないと、老後にお金が枯渇すると言われ、大騒ぎになったのだった。
これに対して、本記事が紹介している、京大と財務省財務総合政策研究所(財務総研)が2015年に行なった調査(以下、京大調査)では、就業していない世帯全体の毎月の取り崩し額を、1.4万円程度と、かなり少なく見積もっている。
月に1.4万円の取り崩しであれば、30年間の不足額は、1.4万円×12×30=わずか5百万円となる。
最も生活が厳しい単身女性の場合でさえ、毎月の取り崩し額が2.1万円であることから、30年間の取り崩し総額は、2.1万円12×30=756万円となる。
これにより、本記事では、2千万円ではなく、8百万円程度の貯金があれば、枯渇せずにすむとしているのである。
では、なぜ実態調査では、不足額が5.4万円/月なのに対して、京大調査では、1.4万円/月と、大幅に少なくなったのだろうか。
京大調査によれば、実態調査は9月から11月の3ヵ月分の家計簿を元にしているが、年金は偶数月に2ヵ月分をまとめて配られることから、3ヵ月分のうち2ヵ月分しか、計算に入っていないというのである。
何じゃ、それは!
そこまで読んで、思わず口が塞がらなくなった。
2ヵ月分を3ヵ月分として計算すると、年金の金額は、わずか3分の2となってしまう。
5年ごとに、多大な手間をかけて、国が行なっている実態調査が、そんな不正確(というより、間抜けで滅茶苦茶)な、統計の取り方をしているだろうか?
そして、京大調査を行なったメンバーは、この、あまりに突拍子もない結論について、国に確かめたのだろうか?
以下、幻冬舎ゴールドオンラインの記事について、検証していくことにする。
(続く)