問題は、4の、「いったい自分たちは、死ぬまでに、毎年いくらくらい、お金を使うのか」ということだ。
経験したことがない未来のことであるから、正確に算出することは、至難の業だ。
これに関しては、世の中の平均値を、参考にするしかない。
下の記事によれば、夫婦2人で生活するうえで、最低限必要な「最低日常生活費」の平均は、月額22.1万円(年間265.2万円)だそうだ。
また、夫婦で「ゆとりある老後生活」を満喫するには、月額36.1万円(年間433.2万円)が必要とされている。
夫が厚生年金、妻が国民年金をもらう夫婦の、受給額の平均は、2人合わせて、月に20~22万円(年間240~264万円)である。
つまり、平均的な年金額だと、「最低日常生活」を送るのがやっとであり、「ゆとりある老後生活」を送るのには、我々がもらう年金額は、あまりに少ないということだ。
自分は、現役時代の給与が高かったから、平均よりかなり多くの年金をもらえる筈だと思っている人が大半だろうが、そうはいかない。
公務員ではなく会社員である以上、厚生年金は多少給与が高くても、さほど増えない仕組みになっている。
そんなわけはないと思う人は、ねんきん定期便という証拠があるのだから、是非とも確認してほしい。
これまで、しっかりと見たことのない人は、額の少なさに、愕然とする筈である。
さて、年金はあくまでも、「生活するのに最低限必要な額」を支給するだけ(それすらもらえない人も、大勢いる)であり、「ゆとりある老後生活」を送るには、到底足りないということは、わかったと思う。
言い方を変えれば、平均額程度の年金をもらっていれば、「最低限必要な生活」は、できるのだ。
但し年金は、生活に潤いをつけ加えるためのお金に関しては、面倒をみてくれない。
コロナ禍のように、旅行も行かない、外食もしないという生活を、死ぬまで送るのなら、それでもいいかもしれない。
だが、国民全員が我慢しているならともかく、自分だけがお金が足りなくて、様々な楽しみを我慢しなければならないという生活は、かなりの苦痛な筈だ。
そのためには、どうすればいいか。
前述したように、年を取ってからいくら収入を増やしても、年金は殆ど増えない。
だとすれば、「貯められるときに貯め、働ける間は働き、少しでも貯金を増やす」しかないのである。
その上で、例えば65歳で稼ぐ道が閉ざされたとしたら、その後の生き方は、2通りある。
1)年金を65歳で受給開始し、足りない分は、貯金で補填しながら生活する。
2)65歳からは貯金だけで生活し、年金はすぐに受け取らずに、できる限り繰り下げ受給して、受給額を増やす。
1なら、身体の動く若いうちに年金を貰えるので、貯金と合わせれば、旅行など、それなりの使い甲斐があるだろう。
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甚だしきは、繰り上げ受給をして、若いうちにどんどんお金を使えというものさえある。
但し、年間240万円そこそこにしかならない年金では、老後には不安が残る。
貯金が4千万円あったとしても、「ゆとりある老後生活」を満喫するためには、毎年200万円ずつ取り崩していかなければならず、20年(85歳)で貯金がなくなってしまうのである。
我が家は、貯金が1億円あったこともあり、2を選んだ。
60歳で辞めたために、75歳まで保たせるのは難しいにしても、70歳まで繰り下げ受給できれば、4割増しになる。
夫婦2人とも厚生年金だということもあり、それだけあれば、老後の憂いはないと考えている。
何しろ、年金というのは、多少は減るかもしれないが、生きている間、ずっともらえるのが有り難い。
毎月赤字を出して、残高が減っていく貯金通帳を見つめ、これがなくなったらどうしようかと、心配しながら老後を暮らすか、充分な額を確保して、老後の憂いをなくすのか。
どちらの生活を選ぶかは、その人の生き方にも関わってくるので、よく考えて決めないといけない。
ただ一つだけ言えるのは、我々の親の時代とは違って、「何とかなる」と思っているだけでは、何ともならないほど、老後の状況は悪くなっているということである。