年金を繰り下げ受給したら、大損をしたという記事を見かけたので、またかと思いながら、読んでみた。
受給者の男性（以下、男性）が、90代まで長生きするつもりで、年金を70歳まで繰り下げたら、72歳のときに癌にかかってしまった。死んだら受け取れないからと、慌てて一括受給したら、それが一時所得とされて、多額の住民税や所得税がかかってきたというものだ。
どこぞで聞いたような話だと思っていたら、同じ著者が去年の8月に、似たような記事（『年金「受給額」を増やそうとして、逆に生活が「破綻寸前」な悲劇 』）を書いていた。繰り下げ受給をしたら、医療費負担が増えて、大損をしたというものだ。それに対する、当方のコメントは、下の通りである。
さて、今回の記事のタイトルには、『年金を70歳まで「繰り下げ」して、心の底から後悔』とある。だが、上の要約からもわかるように、男性の問題は、繰り下げ受給したことにあるのではない。
せっかく繰り下げ受給をして増やした年金を、70歳のときから受け取らず、72歳になって、慌てて一括受給したことによるものなのだ。
年金でなくても、1千万円の収入を１年で受け取るのと、年に333万円ずつ、3年間にわたって受け取るのとでは、税金の額が違ってくるのは、当たり前だろう。
それを、繰り下げ受給したために、負担が増えたというのは、明らかなミスリーディングである。
また、この記事の著者は、例によって、受け取り額の検証をしていない。男性が、65歳から年金を受け取った場合と、今回のように、70歳まで繰り下げ受給した場合で、どれくらいの手取りの違いになるのかが、どこにも書いてない。それがわからないと、繰り下げ受給して、本当に損をしたのかどうか、判断のしようがないではないか。
そもそも、似たような記事を、一年もたたずに載せるところからして、それほど真剣な姿勢で書いていないのではないかと、勘繰ってしまうのである。
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