さて、いよいよここからが、著者独自の見解というか、記事の本論になる。
・世の中は、75歳まで年金なしで暮らせるゆとりのある人ばかりではなく、無理に繰り下げをして貯蓄を取り崩したのでは、老後の暮らしを不安定にしてしまう。
・それを防止するために、「65歳まで働き」、かつ、働きながら、元気に活動できるうちにお金をより多く使える、60歳繰り上げ受給も選択肢に入れるといい。というのも、これまでは、年金と給与の合計額が月額28万円を越えると、超えた額の2分の1が厚生年金からカットされていたが、2022年4月から、月額47万円までなら、全額支給となった。
・繰り下げ受給をする場合は、まず1年だけ繰り下げて、66歳からの年金受給開始を目指し、以降は、支出に合わせて、年金の受給開始時期を、夫婦で毎年検討しよう。
このように、読んだ限りでは、どうすれば繰り上げ受給によって年金が増えるのか、どうにもわからないのである。
どうも、「65歳まで働き続ける」ことにより、受給額を増やせるということのようだ。
もちろん、その間は、厚生年金に加入し続けなければならない。
では、5年間で年金はいくら増えるのかというのを、調べてみた。
年収が360万円程度であれば、月に1万2千円(年間14万4千円)、600万円程度であれば、月に1万6千円(年間19万2千円)以上が増額されるというのだから、ちょっとしたものだ。
但し、年金は、受給を1ヶ月繰り上げるたびに、0.5%が減額されるということは、覚えておかなければならない。
即ち、受給を5年間繰り上げて、60歳から年金をもらい始めた場合、0.5%*12*5=30%がカットされるのだ。
65歳受給開始の場合に、受給額が厚生年金の平均である200万円とすると、60歳に繰り上げ受給した場合、年に60万円(月5万円)が減額されて、受給額は140万円となる。
どう考えても、こちらの影響の方が大きい。
繰り上げ受給で減額される分は、65歳まで働いたからといって、簡単にカバーできるような金額ではないのである。
結局、この記事では、「年金を増やす裏技」などなくて、「65歳まで働けば、その分の年金が増額される」ということしか、言っていないような気がする。
充分な貯金がない限り、「65歳(場合によっては70歳かそれ以上)までは、働かざるを得ない」のは、どうしようもないことなのだ。
但し、「何が何でも、75歳まで繰り下げると決めず、毎年、夫婦で家計を確認して、事情に合わせてライフプランを修正していく」というのは、万人に通じる基本原理であるとは、言えるだろう。