政府が、学生全体の35%しかいない理系の学生を、50%まで引き上げるための支援策とやらを発表した。
だが、個人的に言わせてもらえば、そんなことをしても無駄である。
理系に人気がないとしたら、すべてに不利だからだ。
まず、大学での勉強時間が、全く違っている。
朝から深夜まで(下手をすると翌日も)、長時間の実験をやらないと、単位が取れなかったり、夏休みは殆ど実習で潰れたりする。
ブラック企業、顔負けである。
そして、卒業後の進路にも、不利な点が多い。
メーカーなど、理系出身者が多数就職するような企業は、商社・マスコミ・銀行など、文系出身者が就職する企業に比べ、圧倒的に給与が低い。
おまけに、メーカーに就職しても、常務以上の幹部は、人事経験者などの数少ない文系から選ばれることが多く、理系出身者は、工場長などの平取締役止まりだったりする。
また、勉学を極めようと、博士号まで取ってしまうと、企業には殆ど就職できないと言っていい。
企業が歓迎するのは修士までで、博士は歓迎されないのである。
大学で学んだことを生かそうと、大学や研究機関に就職しようとしても、門は限りなく狭い。
運良く研究機関に就職できても、任期付きの仕事しかなく、来年も採用を継続してもらえるか、戦々兢々としなければならない。
ブルーバックスなどの著者の経歴を見ていると、様々な研究機関を渡り歩いていることが多い。
優秀だから、あちこちに誘われるわけではなく、大抵は、3年ほどたつと職を失うのである。
何しろ、日本を代表する研究機関である理化学研究所でさえ、終身雇用でなく、10年間で雇い止めを喰らうのだ。
三角関数も理解できないような、文系の公務員に、「あなたは明日から来なくていいです」と言われるのだから、やってられないと思うのも無理はなかろう。
ちゃんとした待遇さえ与えれば、大学における学費が多少高くても、優秀な人物は理系に進んでくれるのである。
それは、医学部の人気の高さを見れば、一目瞭然だろう。
医学部の人気が高いのは、医者が儲かるからだ。
なぜ医者が儲かるかと言うと、政府が医療費を高く設定している上に、その7割を支援する政策を取っているからである。
そういった対策をせずに、大学の学費だけ支援しても、金をドブに捨てるようなものだし、それに乗せられて理系の大学に進んだ人間も、不幸になるだけだろう。