ここで、貯金の第2の仕組みについて説明する前に、売り手の側に立ってみたいと思います。
前述したように、売り手の側としては、消費者にお金を貯め込まれては、物が売れずに困ってしまいます。
それでは困るので、売り手の側は、あの手この手を駆使して、何とかしてお金を使わせようとしてきました。
今の若い人には、想像もつかないでしょうが、かつては、現金でしか買い物ができませんでした。
何しろ、銀行の窓口に、通帳とハンコを持って行かないと、お金が降ろせませんでした。
銀行が開いているのは、平日の9時から15時のみ。
その時間以外には、降ろせないのですから、金曜日に降ろし忘れると、土日はお金がなくて、綱渡りということもありました。
但し、降ろせないお金は、使うことがありません。
不便でしたが、その分、無駄なものを買うことも少なかったのです。
結果、買い物は明日にしようとか、手元にあるお金は、まず必要なものを買うのに残しておこうとかいうことになって、自然と節約ができていました。
ところが、これでは消費がなかなか増えません。
そこで、売る側の人たちは、もっと簡単にお金を手元に降ろせるように、いろいろと考えました。
まず、キャッシュカードができて、かさ張るハンコと通帳を持っていかなくてもよくなり、しかも、銀行の窓口だけでなく、無人のATMから降ろせるようになりました。
ATMは機械ですから、24時間365日働いてくれます。
さらには、自分の預けている銀行でない銀行や郵便局でも使えるようになり、ついには、金融機関だけでなく、日本じゅうのコンビニで、お金が降ろせるようになりました。
このように、売り手側は、買い物の便利さを提供することで、私たちがお金を払うことへの、物理的な障害を、どんどん減らしていきました。
そして次は、心理的な障害を、減らすことを考えます。