定年後の生活を充実させるために、様々な本や記事が出ているが、その一つの手段として、「趣味を持つ」ということがある。
何しろ、65歳に定年になって、85歳まで生きたとしても、20年の時間がある。
引き続き、仕事をできる人はいいが、趣味のない人間は、時間を潰すのに、苦労しそうだ。
筆者の近くの図書館でも、朝から、延々と新聞を読んでいるお年寄りがいる。
複数の新聞を読むのが趣味ならともかく、大半の人は、やることがなくて、しかも、家にいても妻や家族に相手にしてもらえず、仕方なく図書館に来ているのだろうと思う。
コロナで図書館などの施設が閉まっていたときは、さぞかし大変だったろうと、他人事ながら心配になる。
ところが、『人生に趣味なんていらない』という記事が出ていた。
いかにも現代ビジネスらしく、挑発的なタイトルをつけて、読ませようとするのだとわかっていながら、思わず読んでしまった。
以下、紹介するが、登場の順序は変えてある。
まず、卓球サークルに入会した、富田氏(仮名・72歳)の話。
「サークル内にいくつも派閥があり、陰湿なイジメもあった上、新入りだからと雑用を押しつけられて、半年以下で辞めてしまった」という。
また、若林氏(仮名・70歳)は、「65歳から山歩きを始めたが、性に合わずにすぐに辞めた」と言う。現在は、ソファで寛ぎながらの、野球のTV観戦が趣味だそうだ。
これらの失敗談に対して、エッセイストの勢古浩爾氏(75歳)は、「喫茶店とか読書とか韓国ドラマとか、日常生活の中で小さな楽しみを見つける」ように説く。
また、コラムニストの大江英樹氏(70歳)は、「家事を手伝ったら家でごろごろするのがいい」と言う。
さて、これだけ読むと、70を過ぎてから新たな趣味を持つのは大変だから、今更そんなことは考えず、孤独でもいいから、自分の好きなように生きればいいということのようだ。
ところが、老年になった男が、やることもなく一人でごろごろしていると、健康上、極めて悪いことは、世界中で証明されている。
特に、妻がいる間はまだしも、妻を亡くして友だちもいない男は、認知症になりやすかったり、健康を害してあっという間に死んでしまうのだそうだ。
(続く)