著者は、「平均寿命というのは日本人全体というマクロでみれば意味のある指標だが、個人の寿命というミクロでみた場合、あてになる指標ではない。」と書いている。
だが、「自分の寿命は誰にもわからないというのが真実なのだ。」とも書いている。
である以上、確率的にこうだろうということを、参考にするしかない。
それが、平均余命である。
令和4年における、男の0歳児の平均余命(これが平均寿命である)は81.05歳だから、赤ん坊は、(大ざっぱに言えば)半数が81歳まで生きる。
一方、65歳の平均余命は、19.44年。
65歳まで生きていれば、ほぼ半数以上の人が、84歳まで生きるのだ。
だとしたら、繰り下げしても、かなりの確率で損益分岐点を越えることになる。
今回取り上げたコラムの著者は、「自分の寿命はわからないので、自分で自分の寿命を想定して何歳から年金もらうのが最も有利という計算はできない。もしやるとしても、それはギャンブルだ。」
と書いているが、それは違っている。
長生きするかもしれないのに、目先の欲に負け、82歳までに死ぬことに賭けて、年金を早くもらってしまうことこそが、ギャンブルなのだ。
このギャンブルに負けると、85歳を越えて生き続けた時に、お金が足りなくなる。
これほど、悲惨なことがあるだろうか。
ではなぜ、この著者は、「筆者も定年で給与収入がなくなったので、規定通り65歳から年金をもらった。」と書いているのに、年金が足りないということにならないのか。
それは
1) 現在72歳ということで、これから年金をもらう人に比べて、年金額が恵まれている。
2) 現役時代の経歴を見ると、結構華々しい活躍をしており、平社員の筆者とは違い、かなりの年金額をもらえている筈。
3) コンサルティング会社を経営しており、65歳を過ぎてからも、個人事業主としての収入がある。
などが理由であろう。
「どのような立場の人が書いた文章か」を、読み取らないと、的外れのアドバイスに従い、なけなしの年金で損をする羽目になるということだ。
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