『越境刑事(中山七里著、PHP研究所刊)』という本を読んだ。
ネタばれがあるので、未読の方は注意のこと。
某県警の刑事が中国に行って、拉致されたウイグル人を救助するという展開で、最初から最後まで、正直、話に無理があると思う。
元々、エンタメに振り切った著者なので、こういうエンタメ要素が少なく、思想がかった本を書くときは、義憤に駆られて書いているか、出版社の意向に沿ってそのまま書いているかのだろう。
子宮頸がんワクチン被害を扱った、『ハーメルンの誘拐魔(角川書店刊)』が前者のよい例で、思い込みと偏見のオンパレードである。
さて、『越境刑事』に戻ると、本の中には、ウイグルに対する中国共産党の弾圧と同化政策、そして秘密警察による拷問がこれでもかと書かれており、胸がむかついてくる。
同時に、これとほぼ同じことが、わずか80年前の日本で起きていたということを、振り返らずにはいられない。
お互いに認めたがらないとは思うが、中国の秘密警察は戦前日本の特高警察とそっくりであり、中国の収容所や思想犯に対する扱いは、治安維持法を背景にして拷問も洗脳も何でもありだった、特高警察の振舞いそのものである。
舞台を日本にして、ウイグルを朝鮮あたりにすれば、80年前の歴史が甦る。
もちろん、特高警察は朝鮮人だけを相手にしていたわけではなく、日本人でも、大日本帝国の高邁な思想に逆らう者は誰でも引っ張って、でっち上げた罪を自白するまで責めたてたのは、中国警察と変わらない。
それはもう歴史の彼方の80年前の話であって、今の日本は民主国家で警察は民主警察だから関係ないと思うかもしれないが、日本は自ら進んで制度を改めたのではない。
無条件降伏し、アメリカの指導で治安維持法を廃させられ、特高警察を解散させられて民主警察を押しつけられたから、今はそうなってはいないだけのこと。
下手に戦争途中で和解し、憲法も改正せずに大日本帝国が続いていたなら、現代の共産中国のようになっていることは、間違いない。
話は変わるが、どこかの政治家が、大日本帝国の軍隊は世界でも類を見ない礼儀正しい軍隊であり、民間人を虐殺するわけがないと発言していた。
だが、警察が、国内で同じ国の一般的な日本人相手に拷問をしているのに、海外に出てタガが外れた軍隊が、相手が民間人であろうがなかろうが、敵国人に対して拷問でも虐殺でもしないわけがないのである。
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