
人生百年時代を見据え、定年後に備えてどのような準備をするべきかという本やネットの記事が、星の数ほど出ている。
だが大半は、定期的な収入がなくなり、老後の支出がどうなるかといった、お金の問題であったり、或いは、やることがない生活を避けるために、趣味やボランティアといった生きがいを見つけようというものである。
即ち夫は、仕事から解き放たれて有り余る時間があるというのに、家事の大半を妻に任せるということが、大前提となっている。
なぜなら、書き手の大半が、元サラリーマン男性のファイナンシャルプランナーばかりで、男の立場から見た定年後しか書かれていないからだ。
考えてもみてほしい。
会社に行っている間はまだ我慢ができても、ずっと家にいてゲームをしたりネットを見ている夫の食事を、三度三度、しかも半永久的に作らせられるというのでは、妻はたまったものではない。
友だちと旅行に行こうとしても、「俺の飯はどうするんだ」とぼやかれた日には、楽しみも半減する。
そんな妻の気持ちが想像できない人間が、定年退職の日にいきなり熟年離婚を言い出されて、慌てる羽目になる。
定年後を心穏やかに過ごすためには、何よりも妻との関係を良好に保つことが大事なのにである。
定年になったら、暇ができるから、それからゆっくり家事をやればいいと思う人も(稀に)いるかもしれないが、既にそのときは、妻の我慢の限界は過ぎている。
少なくとも50代に入った時点で、定年後の生活について妻とじっくり相談し、妻に頭を下げてでも家事のやり方を学んでおくのが、正しい定年の準備というものだ。
また、それは妻のためだけでなく、夫自身のためでもある。
最低限の家事(特に食事)くらいは身に着けておかないと、妻が病気になったり死んだり、熟年離婚されたりしたときに、どうにもならなくなるからだ。
一部の勝ち組を除いて、ほぼすべてのサラリーマンは、65歳で会社から追い出される。
そこから、平均寿命の81歳まで16年間、下手に長生きをして90歳まで生きると、何と25年間であり、会社生活の半分よりも長いのである。
その長い時間を、妻と仲良く充実した生活を送れるかどうかは、定年退職日ではなく、そこに到達するまでの10年間にかかっているのだ。
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いつも、読んでいただき、有り難うございます。
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