最後になるが、本書の末尾に、著者が摂っているアルカリ化食の一例が出ている。
著者は、京大退官後に胃癌になって胃をほぼ摘出したが、下のような食事により、癌の再発を防いでいると言う。
朝食:トマト、レタス、リンゴ、キウイ、ドレッシング、ゆで卵、玄米パン、ニンジンジュース、ビタミンC。
昼食:古代米入り玄米ご飯、卵焼き、ひじき、ダイコン、昆布、トマト、ブロッコリー、レタス、ピーマン、ドレッシング。
夕食:トマト、レタス、ベビーリーフ、ドレッシング、魚料理、野菜おひたし、古代米入り玄米ご飯、ビール150ml。
確かに、肉や魚や乳製品は少なく、どちらかと言うと、糖尿病食に近い。
しかも、著者は79歳である。
胃をほぼ摘出した高齢者としては、こういった、胃に負担のかからない食生活をしていて、悪いことはないと思う。
だからと言って、これが癌を治す特効薬になるとは、とても思えない。
と言うのも、世の中には、動物性の食材を全く摂取しない、菜食主義者やヴィーガンと呼ばれる食生活を送っている人たちが、大勢いるからだ。
彼(女)らは、肉や魚だけでなく、人によっては、乳製品さえも、全くといっていいほど食べない。
しかも、親の方針で、幼い頃から、そんな食生活を続けている場合もある。
その彼(女)らにして、全く癌にかからないというわけではないのである。
確かに、発症リスクは少ないとされているが、それも癌の種類によってはさほどのことはなく、すべての癌では、発症率が10%程度低いだけのことだ。
アルカリ化食とやらを、毎日食べていても癌になるというのに、一度、癌になってしまった身体(しかもステージ4!)を、菜食主義だけで治せるとは、とても思えないのである。
初期の膵臓癌にかかったスティーブ・ジョブズ氏は、菜食主義で治すのだと言い張って、治療を拒否し、56歳で人生を終えた。
同じ轍を踏む人が、一人でも少なくなるよう、願うばかりである。