『硝子の塔の殺人』(知念実希人著 実業之日本社刊)を読んだ。
尚、以下はネタばれを含むので、注意されたい。
大富豪が、金に飽かせて建てた硝子の館で、連続殺人事件が起きるという、古式ゆかしい設定だが、話の構成が、かなり凝っていて、どんでん返しもある。動機が、非現実的と言えば非現実的だが、ありかなとも思う。
だが、次のところは、物理的に、実現不可能ではないかと思った。
ここから、ネタばれになるので、白字で書く。
読みたい人は、マウスで選択して読んでいただきたい。
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本書では、遠くの景色を見るために、窓が、巨大な凸レンズになっているという設定である。
この凸レンズで、太陽光を集めて収れん火災を起こすというのが、トリックの一つになっている。
だが、窓を凸レンズにしても、遠くの景色は、大きく見えない。
虫眼鏡で物を見ると、近くの物を大きくすることはできるが、遠くの物を大きくすることはできない。
それをするためには、双眼鏡のように、接眼レンズと対物レンズを組み合わせる必要があるのだ。
拡大の原理| Sport Optics Guide|株式会社ニコンビジョン
また、凸レンズで物が大きく見えるのは、目がレンズの焦点距離よりも、レンズに近い位置にある場合だけである。
目が、レンズの焦点距離よりも遠い位置にあると、像は倒立する(逆さになる)。
本書では、太陽光がテーブルクロスに焦点を結ぶのだから、窓からテーブルクロスまでの距離が、窓(レンズ)の焦点距離ということになる。テーブルクロスよりも遠くから窓を見ると、外の景色は、倒立して見えることになり、窓がレンズだというのは、一目瞭然なのである。
1.1 レンズによる像:1.顕微鏡光学の基礎:顕微鏡の基礎─日本顕微鏡工業会(JMMA)
上記の考察は、もしかすると間違っているかもしれないが、少なくとも、窓を凸レンズにしただけで遠くの物を拡大できれば、双眼鏡はいらない筈である。
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