さて、『修羅の門』が終わって15年ほどたち、続編が出るというので、期待して単行本を買ったわけだが、結局、最後まであのワクワクする格闘シーンが甦ることはなかった。
というのも、前述した通り、九十九が挑戦者ではなく、伝説のチャンピオンになってしまったからである。
新たな敵として、九十九不在の3年の間に格闘技の理論が進歩し、近代理論に従った格闘家たちが、幅を効かせているという設定になっている。
ところが、その近代格闘家たちがさっぱり魅力的でなく、しかも強さが全く感じられない。
近代格闘家たちの過去の戦いが描かれることがなく、登場人物の語りだけで、彼らの強さを描いたからである。
それは、『ロッキー4/炎の友情』に出る、イワン・ドラゴと比較すれば、よくわかる。
アポロをリングで圧倒的な強さで殺し、機械のように近代的なトレーニングを、苦しむ顔も見せずに行なうところが描かれたからこそ、「ロッキーが、これほどの猛者をどうやって倒すのか」という期待感が、いやがうえにも高まったのだ。
その、一番大事な過程が、全くと言っていいほど描かれていない。
例えば、魅惑的な美女たちが次々と現れ、主人公と恋に落ちるのに、その美女たちのエピソードがまるでなくて、周囲が「何て美しい女だ」と言うばかりのようなものだ。
おかげで、「何だかよくわからないけど強いらしい格闘家が次々に出て来て、順番に九十九に倒される」というだけの話になってしまった。
(続く)
--------------------------------------------------------------------------------
いつも、読んでいただき、有り難うございます。
記事が気に入ったら、下のバナーのうちどちらでもいいので、クリックして、応援いただけると、有り難いです。