日本では、温めた湯に入る、入浴の効果が、あちこちで語られている。
その最たる効果は、無重力に近い状態となり、かつ、満遍なく水圧をかけられることによって、リラックスして疲れが取れるというものである。
身体の芯から温まることで、血行が良くなり、冷えが消えるというものもある。
ところが、世界に目を向けると、実は、温めた湯に入っている民族は、そう多くはない。
テルマエ・ロマエ(ヤマザキマリ作)によれば、現代日本人と古代ローマ人は、世界の歴史の中で、入浴好きの筆頭だそうだ。
ということは、日本人は現代の世界で、最も入浴を好む民族ということになる。
現代世界における、大半の人々は、湯に浸かるのではなく、湯をかぶるシャワーを使っているのだ。
では、日本人は、入浴によって、世界の人々よりも、健康状態が格段に良くなっているのだろうか。
とてもそうは思えない。
どちらかと言えば、外国人に比べて、日本人の方がいつも疲れているという気がする。
「疲れた」とか「肩がこった」とかは、しょっちゅう聞くし、街のあちこちに、これほどマッサージやら整体やらがあるのは、日本くらいではないだろうか。
(実は、↑のあたりは、過去にも書いていたことを、後で気がついた)
ここからが、本稿のオリジナルな意見になる。
入浴の習慣のない外国人に、無理やり入浴させても、あまりリラックスはしなさそうである。
ということは、入浴の効果と称されているものは、単なる思い込みなのだろうか。
だが、日本人であり、日常的な入浴習慣のある筆者の場合、入浴すると気分がリラックスし、疲れが取れているのは、間違いない。
決して、単なる思い込みではないと思う。
ということは、入浴を常日頃の習慣としている人だけが、入浴によって恩を蒙るということになる。
話がいきなり飛ぶが、ここで筆者が連想したのが、煙草に含まれる、ニコチンの依存症だ。
喫煙者は、煙草を吸わないでいると、ニコチンの禁断症状によって、集中力をなくし、イライラする。
煙草を吸うと、ホッとしてリラックスし、集中力が戻ってくる。
実は、ニコチンの禁断症状によって起きたマイナス分を、ニコチンを供給することによって取り戻しているだけなのだ。
麻薬患者や、アルコール依存症と同じであって、決してニコチンがプラスに働いているわけではないのである。
入浴の習慣というのは、もしかすると、それと同じではないだろうか。
普段から入浴をすることにより、我々の肉体と脳は、入浴が前提の状況に慣れきっている。
そのため、1日でも風呂に入らないと、すごく落ち着かない気分になって、疲れてしまうのだ。
入浴で疲れが取れるというのは、プラスの効果があるのではなく、入浴を抜いたことによる疲労感によるマイナス分を、取り戻しているだけなのではないだろうか。
この仮説を、誰か、ちゃんと調べてくれないかと思っている。