日本のプロ野球における、シーズン本塁打の最多記録は、元ヤクルトのバレンティン選手が2013年に記録した60号で、日本選手の最高は、元巨人の王貞治選手の55号である。
https://npb.jp/bis/history/ssb_hr.html
先日、ヤクルトの村上宗隆選手が、日本選手最多タイとなるシーズン55号を記録したが、その後、王氏の記録を抜けるかというところで、足踏みをしているらしい。
足踏みの原因には、敬遠がある。
打つ気満々で打席に立ったところに敬遠されると、どうしても集中力が削がれ、次の打席にも影響するらしい。
敬遠が多いのは、大打者の証明でもあるが、日本の場合は、特有の事情がある。
王氏の55号に近づくと、それまでとは比較にならないほど、敬遠が増えるのである。
特に、バレンティン氏が記録を更新する前、王氏の記録が、そのまま日本記録だった時代は、ひどかった。
日本人で、王氏の記録に近づく選手はいなかったから、敬遠されるのはすべて外人選手である。
そのことが、「ガイジンに、日本の誇る王氏の記録を抜かれるのは恥」という雰囲気を作りだし、どの投手も勝負を避けた。
タフィ・ローズ(55本)、アレックス・カブレラ(55本)、ランディ・バース(54本)の各選手が、王氏の記録に並んだり迫ったりしたが、敬遠攻めにされ、どうしても抜くことはできなかった。
特に、ローズ氏が55号を打って王氏に並んだ際に、対戦相手のダイエーの監督は、その王氏だった。
ダイエーのバッテリーコーチだった若菜氏は、試合前のミーティングで、「(王監督の記録を)外国人に抜かれるのは嫌だ。ローズに積極的になるな」と、暗に敬遠を指示したと言われている。
結局、バッテリーは、ローズ氏に対して、全18球中、僅か2球だけしかストライクを投じず、ホームランの日本記録が更新されることはなかった。