中日の福留孝介選手が、45歳で現役を引退した(らしい)。
かなり古い選手であり、大リーグ(今はメジャーと呼ぶ方が、分かりやすい)でやっていたということもあって、名前だけは知っている。
さて、この選手が、引退会見で言った言葉に、引っかかった。
福>「子どもたちともこれから少し時間ができるので、いろんなことをしたい。『普通の父親』に戻れる部分なのかなと思う」
これを聞いて思い出したのが、ドラマにもなった、「ミステリと言う勿れ(田村由美作、小学館)」で、主人公の久能整(ととのう)が言ったセリフである(単行本1巻、pp. 91-93を、一部改変)。
整>「メジャーリーガーや監督は、家族のイベントで、時々試合を休むんですよ」
整>「彼らは、子供の成長の記念日に、立ち会いたいから休むんです」
整>「それについて日本の解説者は、『奥さんが怖いんでしょうねえ』と言うんです」
整>「自分がそう思ったことがないから、メジャーリーガーが、イベントに行きたくて行っていることが理解できないんです」
福留選手も、野球一筋で、これまでは子供のことなど構わずに、奥さん任せできたのだろう。
そして、やっと暇ができたから、子供の相手をしてやれるということらしい。
だが、子供の相手というのは、親に「暇ができたから」するものなのだろうか?
野球選手が忙しいのはわかるが、世の中のお父さんたちも、忙しさではかなりのものだ。
共働きのお母さんは、もっと忙しい。
その合い間を縫って、子供を育てているのである。
そもそも、福留選手に、子供の相手をする暇がなかったとは思えない。
というのも、今から5年前の2017年、上の子供が10歳のときに、彼の不倫が発覚しているからだ。
若い女の子(相手は20代とあった)不倫をする暇はあっても、子供の相手をする暇はなかったらしい。
同じ巻(p. 69)での、整のセリフを借りるなら、
「お父さん、あんなに忙しい忙しいって言ってたのに、野球の仕事は何より大事で、そのためにすべてを犠牲にしてきたのに、女の子と遊びに行く暇はあったんだね」というところだろうか。
暇になったから、「普通のお父さん」に戻ると言われても、子供の方は、どうしていいか戸惑うばかりの気がする。
さらに言うなら、「戻る」という表現がおかしい。
「普通の女の子」からアイドルになったキャンディーズが、「普通の女の子に戻りたい」と言ったのは、合っている。
だが福留選手は、「普通の父親」であったことは、一度もないのだから、戻るも何もないだろう。
福>「これからは少し時間ができるので、いろんなことをしたいと子供たちも言った」
と言いつつ、会見の中で、家族としたいことを聞かれて、「何もない」と答えている。
数十分はある会見の中で、家族の話が出たのも、この一瞬だけだ。
彼にとって家族の存在は、その程度のものなのだろう。
家族がどうのと、思ってもいないことを、言わなくてもよかったのにと思う。
尚、以前にも、やはり中日ドラゴンズに関するブログを書いたが、別に、同チームに含むところがあるわけではないので、念の為。