「スマホ脳」では、スマホとSNSが、子供を夢中にさせて注意力を削ぐということで、悪魔の道具のように言われています。
ですが、同じことは、20年も前、ガラケーの頃から言われていました。
直木賞をとった、奥田英朗氏の「空中ブランコ」は、伊良部という精神科医のシリーズ第2作ですが、その第1作「イン・ザ・プール」に、「フレンズ」という短編があります。
作中で、高校2年の少年は、1日に200回以上の携帯メールに応答していました。
そして、常にメールを気にして、ついには携帯に10分さわっていないだけで不安を感じるようになり、伊良部医師のもとを受診しています。
「フレンズ」が、雑誌に発表されたのが、2002年、今からちょうど20年前です。
携帯の害が叫ばれたのは、今に始まったことではなく、20年も前から批判されてきたのです。
そして20年後の現在、当時の高校生は、今や30代半ばの働き盛りですが、「スマホ脳」で言われているような、脳の障害が出ているでしょうか。
出ているとしても、仕事のストレスなど、様々な原因が考えられ、若い頃に携帯を扱い過ぎたせいと断定するには、あまりに無理があります。
親は、自分が子供時代になかったものが、子供の間で流行していると、得体が知れない、不気味なものに思えてしまうのです。
私の親は、私にマンガを禁止しましたが、今の時代の親にそれを言うと、「何で禁止する必要が?」と、不思議に思えるでしょう。
もちろん、スマホの依存症となり、生活に悪影響が表れる人は、実際にいるでしょう。
ただそれが、個人に特有の問題なのか、人類すべてに共通する問題なのか、何もわかっていません。
また、見ている時間の長さが問題なのか、スマホから出る光が問題なのか、SNSが問題なのか、これもわかっていません。
それを、あたかもスマホの害が、科学的に証明されたかのように、触れ回ることが、問題なのです。
そのあたり、「男脳と女脳」の話と、全く同じです。
男の脳と女の脳が、構造的に違っていることは、どうやら確からしいと、科学的にわかっています。 business.nikkei.com
ですが、それがどのように作用しているのか、男女の行動の違いが脳のせいなのか、それとも我々が暮らしている社会のせいなのか、といったことは、何もわかっていません。
それを、女は地図が読めないなどという俗説を、いかにも科学的に証明されているように説くのを、トンデモとか、疑似科学とか言います。
脳は、人間の身体の中で、最も複雑な器官であり、人間を他の動物と異ならしめている、最も重要な器官です。
それだけに、デリケートな扱いが必要であるために、研究が進んでおらず、疑似科学めいた話が、特に多いようです。